新幹線通勤日記(1/4)

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2000年1月18日(火)

 「快適!リゾート通勤3」の放送日。私の新幹線通勤の様子が紹介された。自分の通勤姿をブラウン管越しに見るのも新鮮である。3年前に住み慣れた浦和を離れ、冬目前の福島県白河に越してきた頃のことを思い出す。勤務先を変えずに親の住む福島県まで戻るには、新幹線通勤しかなかったのだが、それほど悩まず「なんとかなるさ」と楽天思考であっさり決めた。越してきた最初の冬は記録的な大雪に見舞われたが、雪が珍しかった我が家族は、庭にかまくらを作ったり、雪合戦をしたりと、一日中雪の中で楽しんでいた。そう、自然の洗礼を受けながらも、私たちの白河での生活は順調に推移している。 番組の最後は『夫婦愛』という、なんとも不似合いな言葉でしめくくられてしまったが、実際、最も影響を受ける家族を第一に考え、なおかつ通勤する本人が楽しまなければ、リゾート通勤は成り立たないと実感する。
 白河市から勤務先のある東京都板橋区坂下までの通勤は、東北新幹線と埼京線を乗り継ぐ、1時間40分の行程である。帰りは21:58発が最終の新幹線。自宅に23:00には着くので、午前様はありえない。こうした点では、浦和時代より家内への負担は減っていると言えるだろう。当初は終電の延長を願っていたが、これ位の時間が妥当かもしれないと思えてきた昨今でもある。ただし、終電に乗れるかどうかの瀬戸際では、階段を駆け上がりホームにたどり着く体力が決め手となる。必死に飛び乗っても、寝過ごせば元の木阿弥。降車駅をセットすると振動で起こしてくれる、バイブレータ機能付き座席ができないものかと切に願っている。

 

1月28日(金)

 自宅から直行で仙台出張。いつもの朝よりゆっくりできる。Max号で電源コンセント付きの座席に座れたので、パソコンの電池消耗を防ぐことができた。午後には会社に戻り、最終の新幹線で白河に帰る。今日もなんとか間に合った。ただ、金曜日は混むので、座れないことも多い。こんな時は、鞄の中の秘密兵器“自作携帯椅子”が威力を発揮する。シンプルな構造ではあるが、抜群の携帯性と最低限の座り心地を確保した自信作である(次期バージョンでは、ドリンクホルダーでも付けてみようと考えている)。結局、今日は通常の倍の距離を新幹線で移動したことになる。
 新幹線内の時間を単なる移動ととらえると非常に辛い。貴重な人生の多くを移動時間が占めているというのでは、あまりにも悲しいではないか。しかし、私にとって新幹線内の時間は単なる移動時間では無く、自宅でも会社でも無い、貴重な第三の場となっている。リクライニング可能な座席で、適度な揺れと走行音の中、毎日ポットで持参するお気に入りのコーヒーを口にすれば、すみやかに至福の時間が訪れる。そしてまずは、パソコンを開いてメールを確認。期限が迫った報告書の作成をするオフィスにもなる。休日に撮影したデジカメの写真を整理・加工するのもこの時間だ。ヘッドホンを付けてMP3を再生すればBGMも楽しめる。英会話の勉強も可能だ。私の場合は、強力な子守唄にしかならないので断念したが。

 

1月30日(日)

 所属している、浦和のソフトボールチームの初練習&新年会に参加。寝ている家族を起こさないように出かける。浦和までの移動手段は、もちろん新幹線。新幹線定期なくしては、この生活は成り立たない。グラウンドに到着すると、浦和在住のメンバーの出迎えをうけた。久しぶりのボールの感触に、全員、年齢も忘れて、大いに走りまわる。練習後に向った新年会の席には、キムチ鍋と寄せ鍋が並んでいた。信じられないほどの大量の材料が、次々と鍋の中、そしてメンバーの胃の中に消えていく。乾ききった体にビールを流し込み、大いに盛り上がる。気心の知れた仲間との、かけがえのない一時だ。白河でも、夏の市民大会の時だけソフトボールチームが編成される。白河のチーム活動を定常的なものにして、浦和の仲間との交流試合を実現することが、自分の密かな目標だ。それまでは、浦和に通い続けることになりそうである。

 

2月1日(火)

 日本橋で富山の顧客を交えての情報交換会(飲み会)。盛り上がって来た頃、終電の時間が近づき、さてどうしたものか迷ったが、私より周囲の面々が終電を心配してくれる(例のTVを見たのだろう)。結局、そのタイミングと配慮に甘えて退席することに。このように、新幹線通勤では、時間的制約(終電事情)があり、夜のお付き合いをどうするかという問題にしばしば直面する。浦和時代のように、すべてのお誘いを受けるわけにはいかないのだから、割り切ることも重要である。それでも、やる時はとことんやる、というのが私の信条ではあるのだが、今日は家内の誕生日。一路我が家に帰ると、昨日、今日と顔を会わせていなかった子供達も起きて待っていた。家族との語らい。仕事、そして通勤の疲れが吹き飛ぶ瞬間である。

 

2月12日(土)

 昨日は、日本一との誉れ高い白河だるま市があった。小6の娘は友人達と、家内は育成会で見まわりと、各々のだるま市を過ごした。よく晴れた今日は、白河高原スキー場へ出かける。久しぶりの滑りを楽しんだ後は、近場の温泉で温まる。我が家からは、リゾート地の那須をはじめ、温泉、キャンプ場、ゴルフ場などが、30分〜1時間位でアクセスできる。渋滞も無いので、当日の天気や体調をみてから予定をたてられるのがありがたい。
 このように、白河の生活は実にゆったり、のんびりしている。空気が綺麗だし、空間が広々して気持ちが良い。子供達も外で元気に遊ぶようになった。冬の手あれがひどかった家内は、白河の水道水になってから手あれがなくなったと驚いている。那須の山並みも綺麗だし、夜空を見上げれば満天の星が心を洗ってくれる。芝貼りにチャレンジし、自作のガーデンテーブル・チェアで、バーベキューを楽しむこともできる。文化的施設の不足(映画館や劇場など)といった不便な点もあるが、日常生活は快適そのもの。最近できた大型ショッピングセンターも、活用させてもらっている。
 冬の寒さは厳しいが、だからこそ春の到来がより一層、ありがたく新鮮に味わうことができる。子供達にとっては、成長するにつれ、また別の価値観が生まれるかもしれないが、家族ともども、リゾート通勤・白河の生活を、日々満喫し充実させていきたい、そう考える昨今である。