新幹線通勤日記(3/4)

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2000年4月10日(月)

 いつもは早起きの私だが、今朝は珍しく寝坊をしてしまった。新聞を見ながらの、ゆっくりとした朝食を諦め、妻に手早くこさえてもらったオニギリを手にして駅へ向かう。いつもの新幹線には十分間に合うが、だからといって朝食をとり損ねたとを嘆くことは無い。新幹線に乗りさえすれば、リクライニングシートで80分程度の自由時間があるのだから、そこでゆっくり食事をすれば良い。食後のコーヒーを味わったら、洗面台に向かい、歯磨きして身だしなみを整える。これで、とても寝坊したサラリーマンには見えるまい。結局、新幹線車内では、結構恥ずかしい状態をさらけ出していることになるのだが。
 もっとも、在来線の通勤では考えられないことだが、新幹線車内では、通勤者が各人各様の新幹線ライフを過ごしている。今朝の私のように朝食タイムに費やす人もいれば、寝不足を補う人、読書をする人、パソコンで文書作成をする人、会議の資料に目を通す人、スポーツ紙で昨夜のプロ野球の結果に目を凝らす人、はたまた、お化粧タイムに費やすOLさんまで存在する。そんな訳で、車内では、たとえ知り合いに会っても、軽く挨拶をするだけで、隣に座ったりはしないのがマナーである。その人の貴重な新幹線タイムを邪魔してはいけないのだ。たまには、世間話をしたくもなるが、その人にとって、今日の新幹線タイムがフリーなのか、なにか用事があるのかどうかに配慮する必要があるだろう。

 

4月14日(金)

 新幹線は、煙草が吸える車両と禁煙車両がある。私は、煙草を吸わないので、禁煙車両に乗る。煙草が無いと辛いという人も多いだろうが、煙草の煙が辛いという人も同様に多い。喫煙可能車両を通ると、反対側のドア付近が紫煙で霞んでいることもある。呼吸を止めて足早に通り過ぎるのだが、これでは喫煙される方も辛いのではないだろうか? 喫煙できるということで文句が出ていないのかもしれないが、JRさんには、車両の速度競争をするだけではなく、空調を改良するなどの地道な努力もしていただきたいものである。
 ところで、デッキに出てこられて煙草を吸う人を多く見かけるが、禁煙車両はデッキもまた禁煙であることをご存知だろうか。満席の時など、やむなくデッキに乗っている人も多いのだが、そこで煙草を吸われると、空調の効きの悪さも手伝って、煙の餌食にされてしまう。吸われる方は、ぜひ周囲を見渡して、そこが喫煙可能かどうかを確認していただきたい。そう言えばこの間、同じ匂いでもとんでも無い輩に遭遇した。十代の若い女性二人が、密室に近い新幹線車内でマニキュアを塗り始めたのだ。そして、また落としては、違うのを塗る。そのキツい匂いを近くにして、眩暈を覚えた諸氏は多かっただろう。お化粧ついでに、ヘアスプレーを使うツワモノを見かけたこともある。車内には多くの方が乗車されているのだから、これは、明らかなマナー違反。大ヒンシュクものである。

 

4月17日(月)

 新幹線の普通車両の座席には、隣席とは袖すりあうという言葉がピッタリする位の間隔しかない。特に、3人掛けの真中の席の方は、両隣の方と肘掛が共用になるため、どこまで使って良いものか落ちつかないことも多い。しかし、隣席まで腕や脚をはみ出し、広げた新聞紙で隣席の方の顔前を塞いだりしている人もよく見かける。私と同じ中年以降の親父に多いのだが。これが帰りの新幹線ともなれば、酔っ払った親父が靴を脱ぎ、小さな虫くらいなら墜落させてしまいそうな悪臭を放つ足を、前席と壁の間に突っ込む輩もいる。これは、言語道断の反則技である。窓際のフックには上着がかけられるが、リクライニングした前席の人の頭に触れたりすることも多い。かけ方ひとつにも配慮が必要なのだ。ちなみに、Max号のフックは前後にスライドするので、自分側に少し引き寄せることが可能である。私の場合、他の方の迷惑にならないよう、フックが背後に確保できる最後部座席を可能な限り利用することにしている。
 ところで、新幹線マナー向上委員会(私が勝手に命名)を自称する私にとって、最近、悩ましい問題が持ち上がっている。車内での携帯電話の使用についてである。「デッキで使用」と言われて久しいが、今朝のニュースによれば、JR東日本は今後、混雑した車内では携帯電話の電源を切るよう、アピールしていくとのこと。ポスターも見かけたが、携帯・PHSともに対象である。PHSは携帯と比べて電波が微弱であり、データ通信なので声を出して話すこともなく、車内使用は全く問題ないと思っていた。駅停車時を狙ってPHS接続によるモバイル運用をしていた私にとっては、看過できない事態である。混雑した車内でという但し書きがあるので、現在グレーゾーンで運用中ではあるが。今後の動向を見守りたい。

 

5月3日(水)

 年末年始とGW期間の混雑は諦めるしか無いと聞いていたが、今日は、家族で東京に遊びに行く。自分は定期券を利用し、家族は自由席の切符を購入した。新幹線は、覚悟していた通りの満席状態。しかし、車内を移動してみると、バッグなどの荷物で座席を複数占有しているとおぼしき人をあちこちで見かける。声をかけると、あけてくれた。混雑していて、立っている人が多数いるのに、小さなバッグひとつで座席を塞がれては困る。結局、子供の分の二席は、すぐに確保できた。
 このようなケースでも黙って立っておられる紳士淑女の方が多いとは思うのだが、ぜひ、声をかけて空いているなら座るようにしていただきたい。同じ料金を払って乗車しているのだから、堂々と座れば良い。高速移動の新幹線、万が一という事態も考えられる。事故が起きた際、支えのない通路やデッキに立っていたら、どのような事態になるのかとゾッとする。これは極端な想定ではあるが、譲り合って、なるべく多くの人が座れるようにしていただきたい。

 

5月5日(金)

 4月はあっという間に過ぎ去り、新しい職場への通勤にも慣れた。GW前半での家族サービスも終え、本日は、久しぶりに自分だけの休日である。新幹線で自宅と会社を往復する日々であるが、今日は、趣味の自転車に新幹線を利用することにした。名づけて、新幹線ポタリングだ。輪行といって、自転車を分解し袋に詰めて新幹線車内に持ち込むのだ。分解しても大きなな荷物なので、置き場所には配慮が必要である。新幹線の助けを借りて、距離と体力を節約し、途中の駅で下車して、自転車を組みたて、のんびりお散歩をするのである。
 GW期間中でも最高の好天気だった今日は、那須塩原駅を起点に、板室温泉までのサイクリングを楽しんだ。那珂川には鯉幟が泳ぎ、道の駅には一面の菜の花畑が広がる。携帯したミニバーナーで湯を沸かし、お気に入りのコーヒーをいれて飲んだ。最高に充実した一日であった。