山形県一周

1979年10月21日(日)。秋も深まり,自転車のシーズンも残り少なくなってきたこの日,1日中走ってみようかと思い立つ。目標がないとつまらないので,山形を一周する計画をたてた。ロードマップによれば,約350kmのコースである。最大の難所と思われる箇所は,六十里越街道(未舗装区間あり)である。10月27日(土)2AM、予定どおり米沢を出発した。


走行データ

日時10月27日(土) 2:00-18:45

行程米沢→長井→左沢→酒田→新庄→山形→米沢

距離353.5km

走行時間13時間51分

休憩時間2時間49分

平均速度21.2km/h(休憩時間除くと,25.5km/h)


走行メモ

1:30:起床

隣室の長尾君に起こしてもらう。昨夜は来客があり,11pm頃床についたのだが,やや寝不足気味。天気は良いらしく星がきらめいている。パトカーのサイレンの音がする。出発という時に不気味である。(記録によると,”釈然としない自分の気持ちを極限において確認する”というくだりがあるのだが何を意味するのか,今となっては全く思い出せない。

2:05:出発。

ミスター・ドーナツで,軽い朝食(夜食?)を取り,米沢を出発する。国道287号線に入り,快調なペースで走る。夜間走行も意外に快適なのだが,人や車のいない夜道は,風,川の流れ,虫の声,木々などのちょっとした物音でゾクッとする。幽霊でもでるのではと少し恐怖を覚えたりする。上を見上げると,右手側に北斗七星,左手側にオリオン座が輝いている。

3:28-3:45:荒砥で休憩(走行距離ロ41.5km)

最上川と並行して走る。すごい霧で体中がびっしょりである。昼間ならコバルトブルーの水面が美しいのだが,真っ暗闇で,不思議なことに水音まで聞こえない。坂を下っていると,このまま永久に地の底まで落ちて行くのではないかと,正直いって恐くなる。リムに水滴が付着するので,定期的にブレーキをかけて乾かさないと,ブレーキが効かなくなる。たまに人家があると,やたら猫が飛び出してきてギョッとする。

4:52-5:05:左沢(あてらざわ)駅で休憩(走行距離28km,累計69.5km)

左沢駅の駅員さんが話しかけてくる。「早いね。どこまで行くんかね?」「酒田まで行こうと思って・・」・・。米沢を出てから,始めて人と会話ができてほっとする。道を間違え,寒河江市内を抜けて反対方向に行きそうになったが,豆腐屋の親父さんに道を教えてもらい,112号線に入る。次第に空は白みはじめ,あっという間に明るくなってくる。不安な気持ちが途端に解消する。間沢のあたりから道幅が狭くなり通行規制が出てくる。起伏も激しくなってくる。寒河江ダムの工事現場を通る。物凄い規模の工事である。空は青く晴れ渡り,最上川の水の緑と数十m(?)の高さに真っ赤な近代的な橋の景観に圧倒される。

6:39-6:55:月山沢で休憩(走行距離30km,累計99.5km)

下宿のおばさんにいただいたおにぎり(おいしい・・)を食べ出発。六十里越街道と言うだけあって,シビアな上り坂が続いた。(途中,道無き道を行くような箇所があったと記憶している)。を勾配としては,西吾妻スカイバレーや蔵王エコーライン以下なのだが,バテ気味である。しかし,7:30頃には,そんなコースにも慣れてきて精神的に楽になってきた。このあたりは標高も高いだけに,目も焼けるような赤や黄だ。途中,いたちの子(大人かな?)が飛び出してくる。全身,山吹色の美しい毛並み。「やあ!」と片手をあげてみた。首をちょっとかしげて,さっと林の中に駆け込んだ。

8:03-8:15:湯殿山ドライブウェイ入口で休憩(走行距離17km,累計116.5km)

料金所からは長い下りが続く。こちら側の紅葉は,3〜5分といったところ。山々の姿はダイナミックで目を楽しませてくれる。112号線の道幅も次第に広くなり走りやすくなってくる。湯殿山,月山第2,田麦俣,大綱などのトンネルを快調に通過し,割合楽に,鶴岡市内に入る。

9:13-9:16:鶴岡市内で休憩(走行距離38km,累計154.5km)

酒田に向って出発するも,市内に入ってしまったせいか道がさっぱり判らない。”2文字”(店の名前だろう。)のお姉さんに道を聞いているうちにお姉さんは二人になり,親切に美しい庄内弁で,信号が・・右へ左へ・・おもちゃ屋の前で・・など,10分近くも説明されたが,結局,お互いにわからなくなり大笑いする。結局,500mほど行ったところに,酒田への案内標識があり,事無きを得た。

10:03-10:40:酒田港で休憩(走行距離27km,累計181.5km)

防波堤に腰をおろして日本海を眺める。心地よい海風にあたり疲れも吹き飛ぶ。ウミネコが騒がしい。小さなカニがハサミをかかげて足に向ってくる。ペンでつつくとひるむが,また立ち向かってくる。イタチといいカニという可愛い奴だ。大きな団体が芋煮会をしているようだ。いい臭いが空腹にこたえる。近づいてみると,数百人の女子高生達(どういう団体だったんだろうか?)である。圧倒される。ああ!と指をくわえつつ退散。(コース的には,最遠地点に到着したことになる。ここから米沢に向って戻りのルートとなる。)47号線に入るつもりが道を間違えロスをする。陽射しが強く季節外れの暑さだ。走っても走っても,さっぱり距離をかせげないようで,気分的に疲れる(疲労だな,これは)。立川町より最上川と並行して走る。川の流れを見下ろしながらの走りで,心が少しなごむ。走りながら,ソフトクリームがむしょうに食べたくなる

11:50-12:00:最上川舟下り最終点で休憩(走行距離29km,累計210.5km)

売店でソフトクリームを食べ出発。次から次へと,観光客を乗せた舟が下ってくる。スピーカーを通して,船頭さんの昔ながらの唄が流れてくる。風流なものだ。自分の頭の中は,新庄に着いたら何をを食べようかという考えで一杯になる。

13:00-13:23:新庄駅で昼食休憩(走行距離31km,累計241.5km)

ここまで来て何とか見とおしがつく。(時間を惜しんで,昼食といえども23分しか休憩していない。一体,この時は何を食べたのだろうか?記録が無い。さんざん,昼飯のことを考えていたはずなのに,きっとつまらないものを食ったに違いない。

14:29-14:40:村山で休憩

13号線に入ってからのだらだら坂と暑さでバテ気味。ジュースを飲むも,ああ!とため息。風景も何もあったものではない。

16:10-16:25:山形で休憩

天童を通過して山形市内に。千歳駅で9分休憩後市内へ,県美術館前公園の石の椅子に大の字にひっくりかえって寝る。体の緊張がほぐれる。噴水の水しぶきが,時折風に乗って顔にかかる。気持ち良い冷たさだ。青い空にすいこまれそうになりながら,上半身を起こして,人の視線に気付く。OLが股間を見つめていた?(おいおい,これはないだろう。きっと,暑さで意識が朦朧としていたに違いない・・

18:45:米沢着(走行距離<新庄より>112km,累計353.5km)

山形駅,上山市,南陽市と小刻みに休憩しながら無事帰り着く。上山市付近では,足が攣り,もう走れないという状態だったが,なだめすかしているうちに,走り出せるようになった。(休憩ごとに記録していた途中経過の走行距離が,新庄以降ゴールまで記録されていないのは,精神的に余裕がなかったのだろう。